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エルフSS(Ranさんが書いてくださいました) 

「では旦那、こちらで少々お待ち下せェ」
商談の場のつもりらしい。薄暗くて小汚い地下室に自分を案内した醜男は、そのまま反対側の扉から出て行ってしまった。まぁ、恐らくその先は、更に地下に通じているのだろう。来た道にも見張りが都度立っていたし、見たところ部屋には大きいが粗末な大テーブルにイスが並ぶだけ。何が出来るでもない。小汚いイスとは言え腰掛けて、一休みするしかなかろう。
「ふぅ──」
と、声が漏れて初めてうっかりに気付く。しまった。思ったより愛想笑いに疲れていたらしい。
意図してなるべくゆっくり顔を撫で、場を誤魔化す。この手の部屋だ。実は壁の隙間から監視が見ているという事もありうる。もし地の表情を見られていたら、不審がられる可能性も否定出来ない。
改めて、この任務に自分を推挙しやがった阿呆が恨めしく思える。
何が小悪党に変装するにはうってつけ、だ。バカにしやがって。
そりゃぁまぁ田舎育ちのせいか、都会育ちの連中よりはその手の素振りも抵抗無いが──と、昔の事を思い出す。
子供の頃は館を抜け出して、良く近くの森に紛れ込んでいたものだ。大人たちが畏れ、敬して遠ざけていた森も、彼「ら」には楽しい遊び場だった。どうやら当地の「人たち」からは相当お目こぼしを受けていたらしい、というのは後になって知った事だ。
──あぁ、あの頃、良く一緒に遊んだ娘が居たな。今頃はどうしているか。
家が没落し、領地も人の手に渡った今、現地の様子を知る術は少ない。新たな領主と共に王都の商会が出入りする様になり、森も商会が切り開いてしまったとも聞くが、さて、本当にそんな事が出来たのやら……。
──カツン、カツン
遠くから近づく足音で、意識は現実に引き戻される。
気を引き締めろ。
今、ここにいるのは地方領主のボンボンや没落貴族の三男坊でもなく、翡翠騎士団の捜査官でも無い。交易都市ローゼンのマフィアが「新しい」宿を開くに当たり、「人材発掘」を目的に王都へ派遣されたドンの名代、という「設定」だ。幸いドンが検挙されたのはまだ昨日。情報封鎖もあり、身元は怪しまれていないらしい。後は自分の演技次第だ──
ガチャリ…
男が戻って来る。その背後には1人の──

nikki245a.jpg

「お待たせしやした旦那。…いやぁ、旦那は運がお宜しい。条件ピッタリの、とびっきりが入ったばかりたァ!」
勿論ウチのとっておきなンですがね、ドンとお取引が出来るってェなら惜しかァないですよ──
そんな男の、愚にも付かないセールストークも馬耳東風。
自分はすっかり、男の脇に佇む「ソレ」に魅入ってしまっていた。
薄暗い地下室で上下の肌着だけという霰もない姿、にではない。
仄かに赤く、やや荒れ気味だがそれでも光を保った長い髪。
まるで新雪の様に白く、それでいて柔らかそうな肌。
手はまさに白魚の如く。
細くくびれた腰は艶めかしく、それでいて、地下室に押し込められていたであろうにも関わらず、肌は若々しさを感じさせる。
そして、長く尖った両耳──
間違いない。まさに「ご禁制」の筈の「森の人」──エルフの少女だ。
どうせ「人間」、特に南方の「黒い肌」が多く奴隷に堕とされる中、エルフ奴隷「だけ」をご禁制とするのも偽善だが、何せ隣国との兼ね合いもある。それは取り締まらねばならない。
だが。それ以前に、この娘は──
「どうです旦那、エルフは美しいでしょう。まだ手も付いてない生娘ですよ、ウヘヘヘ…」
男の下卑た笑いが耳に付く。間髪入れず話を合わせたのは、職業意識と経験のおかげと言うべきか。
「いや全く。王都のネットワークは大したものだ。──だが、ちょっと信じられんな。これほどの逸品──、本当にお試しもしてないのかな?」
「ゲヘヘヘ…止めて下さいよ旦那。そんな事、するわけネェじゃないですかィ。なァ?」
やおら男が話を振ると、少女は緩慢に頷く。その眼差しは場にそぐわず穏やかだ。
恐らく、何も目に入っていないのだろう。余所と同じ幻覚系の魔術処理だ。自宅かどこか、馴染んだ場所で暮らしている様に認識を弄ってしまえば、余程の素養がなければ、多少現実とズレていても自ら修正してしまう。コストは掛かるが、商品価値と機密の維持、そして「建前」を通すのには丁度良い。だからこそ連中も、より高く売れる様、お手つきもせず我慢している。多分。
内心の溜息を押し殺し、わざと下卑たにやけ顔を作りつつ、少女の顔と身体をこの手で検分する。耳は本物、髪や肌の状態は──常人に比べれば滑らかだが、やや荒れ気味。ここに「納品」されて日も浅いのか。
「他には? また頼むかも知れん」
「へへへ。その時はまたご連絡下せェ。【ご紹介】致しますよ」
はぐらかされた。一見小汚い小男だが、仮にも王都でも指折りの地下組織で、禁制品の売買を預かる立場だ。在庫状況をバラすような、バカでは無いか。
「良いだろう。契約成立、後金は馬車渡しだ。良いな?」
「へい。旦那との取引だ、当然信用してますよ。……おい、この方がオマエの『父親』だ。ご挨拶しな」
指示され、やはり緩慢に少女が一礼しようとする。
これも「建前」だ。『ご禁制』の奴隷ではない。あくまで「養子斡旋」に過ぎない、連中はそう言い張っている。
──が、つい。
「いや、いやいや」
それを遮ってしまった。
少女も、そして男も怪訝な顔をする。
しまった。つい反射的に──
「いや、その、なんだ。……お前の父親はあくまでウチのボスだ。オレはその名代……そうだな、まぁ、義兄とでも呼んでくれ」
口から出任せも良いところだ。何が父親はボスだ。単に──
「…お義兄ちゃん?」
こう呼んで欲しかっただけじゃないか!
今度は照れを押し殺して、謹厳に頷く。
それで男も納得したらしい。流石、等と呟いている。
「さて、では行こうか」
そう言いつつ、内心は恐る恐る少女の手を取る。
子供の頃、良く遊んだ時のままの少女を。
これが種族の、寿命の差か。弟扱いされていた自分の方が、今では遙かに年嵩とは。
あの頃は、向こうが見た目も年上だったものだが──
「…はい、お義兄ちゃん」
そして一言呟く。
その時、自分は聞き流していた。あの状態の彼女が口にするとは思えなかったので、何かの聞き間違いだと思ったのだ。男も気付いた様子は無い。が。
──久しぶりだね、と。
聞こえたのだ。



まず、本日はこれきり。
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いつもブログ記事にコメントを寄せてくださるRanさんが、僕の絵に素敵なSSをつけてくださいました。
僕はこのSSを読んで絵を描いたのでは、そんな気にさせられるくらいピッタリとハマったお話だと思います。
Ranさん、本当にありがとうございました! (クールナイツ)

[ 1970/03/02 00:00 ] 頂き物 | トラックバック(-) | CM(0)

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